研究概要 |
本研究の目的は,三次元光弾性応力・ひずみ解析法(透過光法,散乱光法を含む)において,応力・ひずみの非対称面上で入射光路に沿って複屈折位相差を生ずるのみならず,偏光主軸の回転を伴なうという解析上の本質的な困難を克服して,解析に必要な3つの光学的パラメーターを精度よくかつ簡便に計測可能なシステムを構築することにある.以下に,得られた研究成果の概要を3項目に分けて簡潔に述べる. 1)ジョーンズマトリクス画像フーリエ偏光解析法・・・本補助金を利用して,前年度までに本手法展開に必要なハードウェアはすでに調えられ,一連の解析システムが完成した.加えて,詳細な二次元解析を通して,偏光解析手法で得られる3つのパラメーター,すなわち複屈折位相差,偏光主軸方向および偏光楕円率を精度よく,かつ精細に計測可能であることを示し得た.特に,本年度は2方向入射によって生ずる2つの光路面の交叉線上では,より詳細な偏光情報が得られることを利用して,交叉線上各点での2次主応力成分を分離・評価することを試みた.いまだ改善すべき点は見られるものの,基本的な解析手法構築を達成したので,新たな全面解析のためのビームスキャン装置の設計・試作に取り組んでいる. 2)三原色散乱光弾性法・・・三次元応力解析手法として注目されるいまひとつは,従来の散乱光弾性法の改善・改良である.従来の単色光法から脱却して,白色レーザーを用いた三原色散乱光弾性法を構築し,対向圧縮負荷を受ける球体の応力解析を実施し,応力・ひずみの非対称面上でも,従来法に比してはるかに簡便に計測・解析可能であることを示した.解析精度について改善の余地は残すものの,本研究の当初の目的に向けてのひとつのアプローチとなりうることが期待されている. 3)白色楕円偏光を用いる光弾性・光粘弾性法・・・単色光を用いる従来法では,応力・ひずみ解析に要する光学情報を得るのに,2種類以上の計測を余儀なくされ,再現性が期待できない現象の経時的追跡はほとんど不可能であった.本手法では,単一露光で得られるカラー光弾性画像から主応力差および主応力方向を分離計測できる.本年度は,本手法のこの特徴を生かして,粘弾性体における接触問題やき裂の進展問題を取り上げ,その有効性を検証した.
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