研究概要 |
本研究の目的は,電子ビーム露光装置等の高精細リソグラフィ技術を用いずに,ナノスケールのシリコンデバイスを制御性良く作製する技術を確立し,そのデバイス特性における単電子効果や量子効果を評価することである.本研究開始前までに,10nm程度のチャネル幅を有するMOSFETの作製と,単電子効果によるクーロンブロッケード振動の観測に成功していた.本研究では,リソグラフィの限界を超えてナノデバイスを作製する方法として,SOI基板上の異方性エッチングとシリコン酸化膜/窒化膜の積層膜を用いる技術を提案した.2回の異方性エッチングと選択酸化により,SOI層の膜厚に相当するチャネル幅をもつ極めて微細なポイントコンタクト構造を作製する.この構造をチャネルとするMOSFETを多数試作すると,ドレイン電流のばらつきは10%以内であり,極めて均一なチャネルが形成されていることが明らかになった.また,低温でこれらのMOSFETの特性を測定すると,単電子トンネルによるクーロンブロッケード振動が観測された.本技術は均一性と再現性が極めてよいため,本研究の後半では単電子トンネルデバイスを集積する技術を開拓した.まず,シリコン微結晶ドットをフローティングゲートとする単電子トランジスタを作製し,メモリ効果を利用してトランジスタの特性を制御することを明らかにした.ゲート印加電圧により,クーロンブロッケード振動のピーク位置を希望の位置に調整することが可能となる.この方法を用いて2個の単電子デバイスを集積することに成功し,方向性電流スイッチの動作確認を行った.
|