研究概要 |
単結晶絶縁膜と半導体による量子構造デバイスをめざす基礎研究として、単結晶Al2O3絶縁薄膜とSi単結晶薄膜を2〜5nm程度の極薄い膜厚で、交互に積層させた多層極薄膜構造を形成することを目的とし,研究を開始した.研究の手法としてはガスソースと固体ソースを組み合わせた混成ソースMBE法により成長を行った.数nmのSi成長を制御可能な電子ビーム蒸着セルを新しく成長装置に設置することにより、Siエピタキシャル成長の条件とnmの膜厚制御を確立できたので,これらの条件をもとに極薄膜多層構造形成を行うことを目指した. まず,量子井戸構造を形成する上で,障壁層の極薄膜単結晶Al2O3絶縁層の電気的な特性を評価したところ,2nm以下の厚さにおいても5MV/cm程度の絶縁特性が確認できた.その上への4nm以下のSi成長ではAl予備堆積法を用いることで高品質かつ膜厚の制御を可能とした.エピタキシャルSi/Al2O3構造のコンダクションバンドオフセットの値を,Fowler-Nordheimトンネル特性から導いたところ,約1.7eV程度であることがわかった.しかしながらこの値は鏡像効果などを考慮しておらず,実際はもう少し大きな値であると予想している. 以上のように量子井戸構造が形成できていることが確認できたので,エピタキシャルAl/Al2O3/Si/Al2O3/Si-subの共鳴トンネル構造を形成した.その電流-電圧特性を測定したところ,負性抵抗特性が観測でき,共鳴トンネル現象が確認できた.さらにAl/Al2O3/SiAl2O3/Si/Al2O3/Si-subの2重障壁共鳴トンネル構造の形成にも成功し,電気的な特性を測定することができた.これらの結果から、室温動作可能な平面型電子源への応用も期待される。
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