研究概要 |
自己組織化形成シリコン量子ドット(QD)をフローティングゲートとして絶縁膜中に埋め込んだMOS(metal-oxide-semiconductor)構造を作製し,ドットの電子注入,電荷保持及び電子放出特性を調べ,メモリデバイス開発への指針を得た。また,Si QDにおける量子サイズ効果及び発光過程を明らかにした。以下にメモリ効果に関する主な研究成果を示す。 1.ゲート長1μm以下のSi QDフローティングゲートMOSトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性にドットへの電子注入・放出に基づくヒステリシスを見出し,メモリ動作を実証した。また,ゲート電圧を一定に保持してドットへの電子注入をドレイン電流の時間変化(減少)として観測すると,ドットの帯電状態は段階的に生じ,準安定状態を経て最終安定状態に達することが分かった。更に,パルスゲート電圧印加によるドレイン電流の変化から,ドットへの電子注入は多段階的に起こることを明らかにした。 2.Si QDフローティングゲートMOSキャパシタの電気特性から,ドットへの電子注入・放出特性を定量評価した。ドットへの電子注入後及び電子放出後の2状態が室温で安定に保持されることが分かった。ゲート電圧0Vにおける保持電荷量がドット当たり電子約1個であることを明らかにした。また,帯電したQDフローティングゲートを均一誘電体層とみなすことはできず,フローティングゲート中の総保持電荷量が同じであっても,QDフローティングゲートの方が均一層に比べてフラットバンド電圧シフト量が大きくなることが分かった。更に,Si QDフローティングゲートからの電子放出は,ドットに保持された保持電子間のクーロン相互作用のため,多段階的に起こることが分かった。
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