研究概要 |
エキシマレーザーを用いて,レーザードーピングという方法を提案した.シリコンにおいてエキシマレーザーを用いて結晶化及び高濃度ドーピングの実施例はすでにある.しかし,化合物半導体において成功した例は今までなかった.我々は,ドーピングにおいてII-VI族にはNa_2Te,Na_2Seなどの化合物をもちいること,更にZn_3P_2,Cd_3P_2等の化合物を用いることと,レーザー照射中に雰囲気を高気圧中で行い,レーザーによるアブレーションを防ぐことを行うことによって,高濃度ドーピングの出来ることを提案した. 最初にZnSeにNa2Seを蒸着して後エキシマレーザーを照射して,ホール効果による抵抗値,及びキャリヤー濃度の測定をしてドーピング特性を検討した.3×10^<-2>Ωcmの抵抗率と4.8×10^<18>cm^<-1>のホール濃度がえられることが示された.その後,Na_2Teをドーパントを含む化合物として使用することの有効性が確かめられ,安定性においてむしろ優れていることが分かった.ZnSeについてのドーピングの機構の解明のために種々の実験を進めると共に,ZnSe以外の化合物半導体へのレーザードーピングの可能性を検討した. CdTeへのp型ドーピングのために,上記のNa_2Teを用いてアクセプタードーピングの状態を調べた.最適の状態において7×10^<17>cm^<-3>のホール濃度が得られることが示された.更に,Zn_3P_2,Cd_3P_2によるp型ドーピングの実験がおこなわれ,これらはNaによるアクセプタードーピングほどには高濃度にドーピング出来ないが,ドーピングの効果は確認された.CdTeへのレーザードーピングの実験では,レーザーをパターン状に照射することにより微細パターン形成,分離されたダイオードピクセル形成の可能なプロセスが有効であることが示された. ZnOに対するエキシマレーザードーピングの実験も試みられた.これは,ZnO単結晶の提供を受けた,Wright大学(USA)との共同研究で,Zn_3P_2をドーパント用の化合物として用い,高圧酸素中でエキシマレーザー照射を行うことにより,p型ZnOの形成されることが示され,ダイオードの形成実験がなされ,順方向電流の注入による発光も観測されている.これらのドーピングの機構及び詳細な測定は,今後の研究に待たなければならないが,これまでの再現性の良い実験結果から,大変興味深い結果が期待できる.
|