研究概要 |
本研究では,ロボットハンドによる物体の持ち上げ,搬送や位置姿勢決めの動作に主要な役割を果たす定位覚および滑り覚機能を有するヒトの皮膚ほどに柔らかいロボットスキンを構成することを目的とした. まず,定位覚機能については,ロボットフィンガの柔らかい被覆として透明シリコンゲル(針入度50)を用い,この表面に,表面をKOHで粗した縦横2mm,厚さ0.38mmのシリコンチップ片を6mm間隔で5x5のマトリクス状に分布配置した.そして,被覆表面への物体の接触に伴う各反射チップの変位をモニタするイメージガイド(光ファイバ束)をゲル底に対向設置したロボットスキンを製作した.物体として,頂角150°をもつ角柱の2側面をロボットスキン表面に押し当てて,それらの面の位置・姿勢推定を行った.推定精度の評価実験を,各面独立に推定するアルゴリズムを用いた場合と2面間の角度が150°であるという拘束条件の下に,ラグランジュの未定乗数法を用いた場合の2通りについて実施した. つぎに,振動覚機能をもつ触角センサとしては,シリコンゴムを凸間ピッチが12mmで凸の高さが1.5mmの指数(断面が凹凸)状に成形し,さらに凸状のゴム内に短冊形状で厚さ30μmのPVDFフィルムを埋め込み,物体の滑りに伴う振動的な信号を高感度に検出する回路を構成した.ウェーブレット解析ツールを用いて,物体が表面を滑ったときの凸状指紋の振動に起因して発生する信号と,指紋をはじいて自由振動させたときの出力信号を比較し,これらがほぼ同一の高周波インパルス波形を示すものであることを検証した.さらに,センサ出力に,開放時特有の戻り量が含まれるか否かを調べ,とくに,物体が回転するか滑るかまでも詳細に識別できることを示した. 最後に,上記2機能を統合する目的で,5x5に配列されたシリコンチップの両端位置に短冊状PVDFフィルムを配置したロボットスキンを構成した.
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