配分額 *注記 |
13,200千円 (直接経費: 13,200千円)
2000年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1999年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1998年度: 8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
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研究概要 |
本研究は,アルミニウム化合物や酸化物をはじめとする多成分系材料の局所構造を定量評価できる新しい透過型電子顕微鏡(TEM)技術の確立を目的としている。具体的には,局所構造解析法の1つであるアルケミ(atom location by channelling enhanced microanalysis;ALCHEMI)における解析手法の最適化に焦点を絞り,実験と理論計算の両面から検討した。また,アルミニウム合金の規則格子反射の結晶構造因子を種々の手法で測定し,各手法の測定精度を比較した。本研究で得られた主な知見は以下の通りである。 1.アルミニウムや酸素などの軽元素を多量に含む合金や化合物の場合,アルケミの解析結果は回折条件に強く影響を受ける。具体的には,チャネリング条件において規則格子反射に正の励起誤差を与えると,特性X線強度から求められる構成元素の副格子サイト占有率は真の値から大きくずれる可能性がある。このずれは,例えばB2型Ti-Al-Mo合金のように,規則格子反射の構造因子の値がきわめて小さい場合において特に大きくなる。 2.上記のような合金や化合物に対して信頼性のあるデータが得られる新しいアルケミの解析手法を以下のように提案する。(1)結晶方位を系統反射列励起条件に合わせる。(2)電子線の入射方向を変えながら各構成元素の特性X線強度を測定して「回折条件-特性X線強度」のプロフィールを得ると共に,分析領域の膜厚を測定する。(3)アルケミのシミュレーションにより上記のプロフィールのフィッティングを行い,実験結果を最も良く再現する各構成元素の副格子サイト占有率を決定する。 3.アルケミのシミュレーションでは,以下のことを考慮する必要がある。(i)入射電子の動力学的散乱過程と非弾性散乱過程。(ii)弾性散乱電子および非弾性散乱電子との相互作用による特性X線の発生。(iii)内殻電子励起の非局在効果(delocalization)。(iv)試料による特性X線の吸収の影響。 4.B2構造をもつTi-Al-Mo合金のように規則格子反射の結晶構造因子が小さい合金や化合物に対しては,電子回折強度の定量測定と,多波動力学的回折理論による回折強度のフィッティング計算を組み合わせることにより,従来の菊池線交差法や等厚干渉縞法よりもはるかに高精度の構造因子測定が可能である。
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