研究課題/領域番号 |
10450235
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
金属物性
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
蔵元 英一 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (30013519)
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研究分担者 |
大澤 一人 (大沢 一人) 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (90253541)
安部 博信 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (90038555)
佃 昇 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (90038563)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
10,700千円 (直接経費: 10,700千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 金属 / 塑性変性 / 転位 / 原子空孔 / 陽電子寿命 / 格子緩和 / 多体原子間ポテンシャル / 陽電子寿命計算 / 塑性変形 |
研究概要 |
照射や変形を受ける材料中には点欠陥、転位など複雑な欠陥が多数発生するため顕著な材料の特性変化が生じる。この現象はミクロからマクロ、すなわち原子レベルから巨視的レベルに亘るいわゆるマルチスケールの現象である点が特徴であり、全貌を理解することは非常に困難であるためこれまでの長い研究の歴史にもかかわらず未解決の問題が多い。原子レベルの種々の欠陥の基本特性を逐次明らかにしていくことは非常に重要な課題であり、材料特性の全体像を確立するには不可欠の急務である。本研究では主として金属(fccのNi、bccのFe)を中心に、陽電子消滅寿命測定法、電気抵抗測定法、引張試験などの各種物理手段、計算機シミュレーション法などを駆使して点欠陥、転位、それらの複合体など種々の形態の欠陥の基本特性に関する情報を得ること、それらを通して材料のマクロ特性の理解に寄与することを目的にしている。 陽電子消滅測定法は結晶中の原子レベルの欠陥とくに空孔タイプの欠陥の検出に非常に有効な物理手段である。この手段を用いてこれまでに照射導入欠陥、塑性変形導入欠陥、析出物などの研究が非常に進展した。本研究では照射欠陥のみならず塑性変形によって導入された転位、原子空孔、その集合体さらに転位と集合体の複合体などに関する情報を実験、寿命計算の両方から得ておりこれまで知られていなかった貴重な結果が得られた。これまでに転位線に捕獲された陽電子は原子空孔に捕獲された陽電子とほぼ同様の寿命を有すると考えられていたが、寿命計算の結果は非常に短い寿命をもつことが明らかになった。Feの場合、マトリックス中の陽電子寿命は110psec、原子空孔に捕獲された陽電子は176psecであるが、直線状刃状転位線に捕獲された陽電子の寿命は119psecである。Niの場合にもほぼ同様な結果が得られている。この理由は刃状転位の芯にはそれほど大きな隙間は存在しないことが計算機シミュレーションから判明しており、陽電子は捕獲はされるが非常に浅いポテンシャルに捕獲されていることから説明される。したがって変形したFeが示す中間寿命(マトリックスと原子空孔の間の寿命)は刃状転位線上に捕獲された原子空孔に対応するものと考えるのが妥当である。面心立方結晶のNiの場合には原子空孔の安定な集合体は積層欠陥四面体であるので、転位線上に形成された積層欠陥四面体に対しても陽電子寿命計算が行われた。積層欠陥四面体をモデル結晶中に作成し、陽電子の捕獲の様子を調べたところ従来の解釈とは異なる結果が得られた。すなわちこれまでは四面体の6本の稜を構成する転位線(stair-rod dislocation:Burgers Vector=b/3)に捕獲されるものと考えられていたが、計算の結果は4つの頂点に主として捕獲されることが明らかになった。拡張した刃状転位の1本の半転位上に形成された積層欠陥四面体に捕獲された陽電子はやはり中間寿命を与える。このように新しい知見が得られた本研究はこの分野の研究に大きく貢献すると同時に今後の発展へ新しい道を開くものである。
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