研究概要 |
フラーレン(C_<60>およびカーボンナノチューブ)は,炭素の新しい同素体として多大の関心を集めてきたが,希少高額な物質であるため,その潜在的に優れた性質をセラミックスや金属と複合させることによって活用することが現実的である.そこで,今回,フラーレンを,ジルコニア,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),アルミニウム及び銅と複合させるための基礎的研究を試みた.C_<60>とジルコニアとの複合においては,ミセル形成法によって,C_<60>が一様に分散複合したジルコニアバルクセラミックスを作製する方法を開発し,グラファイト膜やガラス状炭素で被覆されたジルコニア粒子の形成を見出した.C_<60>とPZTとの複合においては,PZT-C_<60>複合ゾルを基板上にスピンコート、焼成することによって薄膜を作製し.HRTEMにより,PZT薄膜中に取り込まれたC_<60>がポリマー化していることを見出した.このことは,PZT中に導電性のC_<60>ナノ結晶が分散していることを意味しており,高い誘電率と機械強度による優れた強誘電セラミックスの作製が可能であることを示唆する.また,ジルコニア,PZTとC_<60>の複合体において,カルビン(carbyne)と明白に同定できる物質を見出し,C_<60>からカルビンを製造するための貴重な手がかりを得た.C_<60>と銅との複合はメカニカルアロイング法により可能であることを実証した.ナノチューブと金属との複合は,ナノチューブ強化アルミニウムの作製において試み,ナノチューブがアルミニウムと反応層を作らないという重要な成果を得た.高圧圧縮によるポリマー化C_<60>とC_<60>-ナノチューブ複合体の作製も試み,C_<60>ポリマーが高い構造異方性を示すことやナノチューブ強化C_<60>ポリマーが延性を示すことを見出した.
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