研究概要 |
本研究では,材料中の微視的な領域における水素の存在位置と存在量を同時に観察することのできる顕微水素イメージングシステムの実用化を目的として,ラジオルミノグラフ法および電顕オートラジオグラフ法による実験を実施した.純バナジウム試料では,水素濃度は(001)面で高く,(111)面で低いことを示し,結晶面に依存して異なることを明らかにした.これにより,試料表面位置と水素濃度との関係を得ることが可能となった.BCC相とラーベス相の2相組織を有するV-Zr-Ni-Ti合金では,水素はBCC相よりもラーベス相上に多く観察されたことから,水素はラーベス相から優先的に侵入することが明らかとなった.また,ラーベス相の割合が多い領域では水素濃度は時間とともに減少するが,BCC相の割合が多い領域では水素濃度は一度減少した後に増加することを見出し,水素はラーベス相からBCC相に移動することを明らかにした.V_<95>Fe_5合金では,鉄の添加は水素吸収量を増加させること,および水素の分布は鉄の偏析による鋳造組織に対応することを示し,局所的な平衡水素濃度は鉄の偏析と相関のあることを明らかにした.また,水素濃度分布のラインプロファイルの解析から,水素濃度と鉄濃度の関係を定量的に得ることができた.V_<35>Cr_<40>Ti_<25>合金では,試料作成時に水冷銅鋳型に接していた領域において水素濃度分布はチタンの分布と相関があり,水素濃度はチタン濃度の高い領域において高かった.しかしながら,徐冷凝固部および急冷凝固部では,水素分布とチタン分布には明瞭な相関は見られなかった.これらの領域では水素分布はデンドライトの形態に依存して変化することがわかった.
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