研究概要 |
溶銅を反応媒体として用い,亜鉛硫化精鉱との反応によって直接的に金属亜鉛を採取する「二酸化炭素を排出しない亜鉛生産プロセス」に関して,基礎データとして重要な硫化亜鉛―硫化銅をベースとする混合硫化物系の高温状態図を作製し,硫化亜鉛の活量係数が6.7-16の非常に大きな値となることを明らかにした。これらの活量係数を用いて算出した亜鉛の平衡蒸気圧は1200℃の温度で0.1気圧前後とかなり大きく,本プロセスにより亜鉛を効率的に採取する可能性が示された。一方,硫化鉛と溶銅との反応よって示される鉛蒸気圧はかなり小さく,鉛の収率を高めるためには本プロセスの改良が必要とされることが分かった。 これらの化学熱力学データに基づいて,本プロセスの物質収支および熱収支を検討した。この結果,反応炉の過熱を避けるため装入鉱石の重量の60倍程度の溶融硫化銅を系内に循環させる必要があり,このような多量の高温融体を循環させる技術と所要エネルギーの評価が重要であること,プロセスの不足熱を炭材の燃焼で補うことは二酸化炭素の発生という点で望ましくなく,高濃度の酸素を富化した空気を吹錬ガスとして用いることによってプロセスの不足熱が賄われること,排ガス顕熱が膨大になるので,その回収と有効利用が重要であること,分別的な凝縮工程を導入することによって亜鉛蒸気から直接的に精製亜鉛を得る可能性が有ること,などが明きらかとなった。さらに,金や銀などの貴金属は溶銅中に効率的に回収されるが,ヒ素やアンチモンなどの有害成分も溶銅に蓄積することが予測されるので,これらの成分の除去法の開発が別途必要になることが窺われた。
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