研究概要 |
太陽電池用Si(SOG-Si)製造プロセスの開発を目的とし,溶融Si中不純物の熱力学データの測定ならびに溶融Si中の不純物除去に関する研究を行い,以下の知見を得た。 1.溶融Si中のB,Al,Ca,O,Nの熱力学データの測定:購入した縦型管状炉を用い1723,1773KでSi/固体間平衡,Si/スラグ間平衡,Si/気体間平衡を利用した化学平衡法により,Si-B-N,Si-Al-O,Si-CaO系の熱力学データ(不純物に関する活量係数,相互作用係数)を測定した。なお,雰囲気制御には購入した希ガス精製装置およびマスフローメータを用いた。 2.真空溶解法によるCa,P,Alの蒸発除去:高周波誘導炉を用い1773KにおいてSiの真空溶解実験を行った。1.で決定したSi中不純物の熱力学データを用いた除去限界の検討と本実験結果から,SOG-Siレベルまで精製するためには,電子ビームを用いて浴温度を高温にする必要があることが分かった。 3.B,Pのスラグ/溶融Si間平衡分配比の実測:1773K,不活性ガス雰囲気下で,次式で定義されるスラグ/溶融Si間のB,Pの平衡分配比を測定した。 不純物Xの平衡分配比,L_x≡(スラグ中Xの質量%濃度)/[Si中Xの質量%濃度] (1)SiO_2飽和NaO_<0.5>-CaO-SiO_2スラグ/溶融Si間のBの分配比は小さな値となった。 (2)酸素分圧を非常に低い条件下でのCaO飽和CaO-CaF_2スラグ/溶融Si間のPの分配比は非常に高い値となった。 4.CaO系スラグ添加・酸化性ガス吹き込み(インジェクション)法によるB除去:1773KでSiを融解し,高塩基性CaO系スラグを添加して,酸化性ガスを浴内に吹き込む脱B実験を行った。その結果,最大85%のBを除去することができ,本法を発展させた「酸素・スラグ同時インジェクション法」がB除去に有効であることが分かった。
|