研究概要 |
マイクロセルラープラスチックス(MP)と呼ばれる超微細発泡体は従来の発泡樹脂に比べて熱的,機械的,電気的特性に優れ、自動車産業,航空宇宙産業,電子部品,スポーツ用品など、幅広い分野における活用が期待されている。MPの製造には物理的発泡剤として二酸化炭素や窒素を使用するため、環境への負荷やプロセスの安全性の点からも実用化が望まれている。 本研究ではバッチ法による二酸化炭素と窒素を用いたポリスチレンMPの製造において、飽和圧力,飽和温度,減圧速度,加熱開始時間,加熱温度,加熱時間などのプロセス変数が発泡構造(平均気泡径,気泡数密度,発泡倍率)に及ぼす影響について実験及び理論の両面から検討した。特に、実際の製造プロセスに近い、樹脂のガラス転移温度以上の高温化での検討を詳細に行い、溶解度,粘度,拡散係数などの物性が発泡構造に及ぼす影響を明らかにした。また、溶解した気体を有効に発泡に利用する目的で、溶解・減圧・加熱を同一の容器中で連続的に行う"quick heating method"を開発し、従来の研究に比べて発泡構造の制御性を大幅に向上させることができた。これらの結果より、飽和圧力(溶解度)の増加により気泡径は減少し数密度は指数関数的に増加すること、飽和温度の影響は気体の種類によって異なり溶解度と樹脂粘度が複雑に影響すること、減圧速度が上昇すると気泡数密度が指数関数的に上昇すること,減圧終了から加熱開始までの時間が長くなると気泡径が減少すること,加熱温度の上昇は初期に気泡径を増加させるが後期には逆に減少させることなどが明らかになった。さらに、理論面では従来の古典核生成理論と核成長モデルを拡張すると共に、気体が溶解した樹脂の諸物性を正確に見積もることで、プロセス変数と発泡構造の関係を定性的に表現することが可能になった。
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