研究概要 |
紫外線酸化法により発生させた活性種を利用して全有機炭素(TOC)を分解する,いわゆる高度酸化法(AOPs)が新しい環境保全技術として注目されている.本研究は,装置設計の基礎として,その定量化が求められている水中活性化学種の挙動に関し工業反応速度論的な立場から検討を行ったものである. モデル物質としてエタノール(10ppmオーダー)及びその分解中間体と考えられる酢酸,シュウ酸などの水溶液を選択した.これらを回分式循環系光反応システムにとって,(a)VUV(172nm)光照射,(b)VUV+UVC(185nm+254nm)光照射,ならびに(c)H_2O_2共存下でのUVC(254nm)光照射,によりそれぞれ分解した.任意反応時間毎の中間体(アセトアルデヒド,ホルムアルデヒド,酢酸,シュウ酸・ギ酸)各濃度及びTOC濃度を定量し,また同時に,生成H_2O_2濃度及びpH変化も追跡した.これら実験結果について,まず最初に,いわゆる反応次数表示法によって総括的速度を求め,引き続き,放射線化学分野で評価されてきた素反応群を考慮に入れた新しい反応モデルを用いて評価した. 実験結果によると,以前に行ったメタノール,ホルムアルデヒド,ギ酸の場合と比較してH_2O_2の再生割合が小さいことが分かった.一般にH_2O_2の再生割合はTOC源の種類によって特異的に異なる.一方,TOC分解速度に及ぼす各有機物の濃度依存性はいずれの場合も小さい.総括反応速度の定量化にあたっては,ヒドロキシルラジカル及び有機物由来のラジカル(含イオンラジカル)に比してヒドロペルオキシラジカルの寿命が極めて長いことを考慮した解析が必要であることが分かった.なお,研究成果の一部は1999年6月,アジア太平洋反応工学シンポジウム(APCRE99)において発表した。
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