研究概要 |
1)新規ゼオライト合成に関する研究. 各種構造誘起物質(SDA)を用いて調製したZSM-12の構造を解析し、結晶成長に与えるSDAの効果を検討した。トリメチルエチルアンモニウムは特定の面での結晶成長は認められなかったが、1,6-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ヘキサニウムでは長軸方向へ特異的に成長したZSM-12を生成した。 前年度見出した新規構造を有するゼオライトGUS-1の構造を解明したところ、口径0.67x0.62を有する一次元ゼオライトであることが判明した。国際ゼイライト協会にGONとして構造が登録された。なお、GONは国内で初めて見出された新規骨格を有するゼオライトである。 1,1,1,8,8,8-ヘキサエチル-1,8-ジアゾニアオクタニウムをテンプレートとし、βゼオライトを原料としたSSZ-31の合成を試み、Alが大量に導入されたH-[Al]-SSZ-31(SiO2/Al2O3=48.0)合成に成功した。 2)ゼオライトの触媒機能に関する研究 H-[Al]-SSZ-31を触媒とするビフェニルのイソプロピル化反応を検討した。何れのSiO2/Al2O3比を有するSSZ-31も高い触媒活性が認められ、4,4′-ジイソプロピルビフェニル(4,4′-DIPB)が高い選択率で得られた(最高72%)。この際、触媒内に包接された4,4′-DIPBの選択率は何れの触媒においても70-75%であり、反応は空孔内で進行することがわかった。なお、この際、包接された生成物中に未反応のビフェニルが大量に存在することから、反応はゼオライト空孔入り口から比較的近い酸点が触媒活性を担うことが示唆された。 SAPO4系ゼオライトの触媒機能を調べるためにビフェニルのイソプロピル化を行った。SAPO-11は活性が低かったか、4,4′-DIPBの選択率は90%に達した。一方、SAPO-5は活性が高かったが、4,4′-DIPB選択率は低かった。この際は、ゼオライト口径の差に基づくものであり、口径の小さいSAPO-11では高い選択率が発現するが、より口径の大きいSAPO-5では選択率が低く、選択性がゼオライト構造に起因することが明らかになった。液相生成物及び触媒に包接された生成物の組成を比較することにより反応がゼオライト空孔内で起こることを見出した。しかし、高温では4,4′-DIPB選択率が著しく低下した。この低下は4,4′-DIPBが触媒外表面でより安定な3,4′-DIPBに異性化することに基づくことが判明した。この異性化は外表面をセリアで修飾することにより抑制できることがわかった。
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