研究概要 |
1.障害型冷害研究の焦点 イネの障害型冷害に関するこれまでの研究を概括し,障害型冷害の発生機構を生理学的に解明するためには,窒素施肥から不受精発生までの因果関係の連鎖に関して,葯中の花粉数に注目して解析を進める必要があることを明らかにした. 2.花粉数の品種間差異 耐冷性の階級により分類された品種・系統の花粉数は,平均値では耐冷性が強い階級ほど多かったが,それぞれの階級内で2つのグループに分かれる傾向を示した.これは,花粉数以外についての遺伝因子の関与を示唆している. 3.相対的根量の意義 栽培条件を変えて根と地上部との量的関係が異なる材料を作り,根量と不受精発生との関係を解析した.その結果,危険期冷温処理区の受精率が根/葉茎穂比あるいは根/穎花数比と高い相関を示した.このことは,地上部あるいは穎花数に対する相対的な根量が耐冷性に重要な意味を持っていることを示唆している. 4.栽培条件による花粉数の変動 多窒素条件で栽培すると花粉数が減少するが,りん酸の多施用によりその減少程度を軽減し,その結果,危険期における冷温による不受精の発生も軽減できることを明らかにした.また,低日照条件で花粉数が減少することを明らかにした. 5.植物ホルモンの影響 ジベレリン及びサイトカイニンが危険期の冷温による不受精の発生を助長することを明らかにした.
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