研究概要 |
本研究は,世界各地の多様な気候条件を再現するスモールプラネット温室を開発し,同システムを利用して,主に施設内設置が原則であった養液栽培を露地でも栽培が可能な簡易な露地型養液栽培システムおよびそれに対応する栽培ソフトの開発を目的として,1998〜2000年度に遂行されたものである.露地型養液栽培システムは,広い気象環境に適応でき,節水型で肥料施用量も少ない環境保全型のものを開発の基本理念とした.本施設を使用するにあたり,はじめに温室内の環境分布と高温抑制のための遮光カーテンの影響について調査,検討した.その結果温度分布は温室内においてほぼ均一であったが,日射量は構造材,被覆材の影響によりばらつきが認められた.また,夏季の遮光カーテンは逆に高温を助長することが判明した.また,以後の試験に使用する培地の物理・化学的な特性を調査をした.次にバーク・バーミキュライトを培地とし,培地量・培地組成を変えて,トマトの露地栽培試験を行い,以後に行うスモールプラネット温室内での試験の基礎的データを得た. スモールプラネット温室で擬似的な熱帯環境を創出し,創出した環境下に執帯地域固有の栽培培地を利用した養液栽培システムを構築し,トマト,サラダナの栽培方法を検討した.その結果,経済的にも低コストで熱帯地域の栽培条件に十分対応できるシステムが構築できた. これらの結果から新しい培養液管理法として積算日射量に基づいた給液制御に関する研究を行った.その結果日射比例制御法は,水や肥料のランニングコストを低減し,環境負荷の軽減する点で従来のタイマー制御より実用的であると思われた.今後,各種環境条件下での生育段階に応じた吸水量,吸肥量についてより詳細に検討することにより,熱帯地域でも安定した養液栽培が簡易に実現するものと思われた.
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