配分額 *注記 |
5,900千円 (直接経費: 5,900千円)
2000年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1999年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1998年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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研究概要 |
ナミハダニおよびカンザワハダニはわが国における最も重要な農業害虫で,ともに広食性日本全土に広く分布する。本研究では日本各地でさまざまな寄主に発生する2種ハダニの休眠性の変異を調べ,それに関連した個体群構造の時空間変動、とくに越冬生態を比較した。また2種のDNA塩基配列を調べることにより,わが国においてそれぞれの種にどのような系統分化が生じたかを推測した。 1)わが国のナミハダニ黄緑型の休眠性は変異に富み,北日本の100%の休眠率から徐々に低くなり,本州西南部以南の個体群になると休眠性が非常に弱いものや非休眠性のものが多くなる。また寄主のフェノロジーによる休眠性の分化はまったく見られない。 2)一方,カンザワハダニでは九州以北の個体群はほぼ完全な休眠性であり、ナミハダニに比べて休眠性の強い種である。本種の休眠性は沖縄諸島近辺を境に急激に弱くなり、先島諸島の個体群は完全な非休眠性である。休眠性の変化が見られるのはナミハダニよりもはるかに低緯度域である。また、暖地の個体群では,チャ寄生の個体群の休眠性は草本性および落葉性寄主のものとくらべて弱い傾向が見られた。 3)塩基配列(ミトコンドリア上のCOI領域)を調べると,わが国のナミハダニの個体群は黄緑型,赤色型とも変異が小さく,変異の大きいヨーロッパから二型がそれぞれ独立にごく一部の系統が侵入したと推測された。 4)一方,カンザワハダニには互いに部分的な生殖不和合を示すTとKの2系があり、それらの寄主適合性に違いがある。しかし、ITS1領域およびCOI部分領域の塩基配列を調べると,いずれの領域でも2つのタイプは明確に分離されず,さらにTは多系統でKの一部から派生したもので,二系は種分化の途上にあると判断された。わが国のカンザワハダニ個体群には遺伝的な変異が大きく,ナミハダニと異なり土着種と考えられる。
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