研究概要 |
この研究課題の一部については,研究代表者の数年間にわたる^<15>Nトレーサー法を用いた研究によって窒素動態は少しづつ解明されてきた。稲わらと稲わら堆肥の水田土壌中における窒素動態を水稲の一作期でみると,水稲吸収割合は稲わら区で20%,稲わら堆肥区で6%となり,堆肥にしてしまうと吸収割合はかなり低かった.空気中への揮散割合は,稲わら区で25%,稲わら堆肥区で39%となった.また,堆肥由来窒素の土壌残存割合は両区とも55%であった.水稲吸収割合は,稲わら区で20%,稲わら堆肥区で6%となり,堆肥にしてしまうと吸収割合はかなり低かった.水田土壌に水稲,畑土壌にトマトを栽培して作物による遊離アミノ酸の直接吸収とアンモニアに分解された後の吸収について,アミノ酸R-CH・(^<15>NH_2)・^<13>COOHを施用して調べた。その結果,栄養成長期の水稲およびトマトによる直接吸収割合は,水稲で5〜11%,トマトで0.1〜1.9%となり,水稲に比べてトマトの直接吸収割合は非常に低かった。この原因は,畑土壌では水を湛水している水田土壌に比べて酸素が容易に入るので,土壌微生物の活動が活発になり,遊離アミノ酸が微生物にすぐに取り込まれて同化されてしまうためであった.現在,有機栽培は主として畑で行われている。従来,有機栽培は有機吸収が無機栽培より多いから良いと思われていたが,我々の研究は逆の結果を示していた.そこで,窒素と炭素の^<15>Nと^<13>Cで二重標識した牛糞堆肥由来の窒素と炭素の動態を解析した.二重標識の牛糞堆肥は^<15>NH_4-Nを資料用トウモロコシに吸収させ,^<13>CO_2ガスを暴露して,二重標識した飼料を作成し,これを牛に食べさせて牛糞を得て,牛糞堆肥を作成した.これを畑作物(陸稲)と水稲に施用し,両稲の^<13>C吸収率は無機栽培土壌では1.0%,有機栽培土壌では水稲の^<13>C吸収率は2.2%,デントコーンでは14%であった。^<15>N吸収率は無機,有機栽培で17〜20%であった。
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