研究概要 |
アオコ群体に共存する細菌と藍藻との相互関係,特に藍藻の産生するプロテアーゼインヒビターの生態学的役割を解明するために,まず,アオコに共存する細菌群,特にプロテアーゼ活性を示す細菌群が,アオコの消長と共にどのような変動を示すのかについて検討した。京都市の弁慶池において,Microcystis群体のスライムに付着している細菌を分離し,細胞外プロテアーゼ活性の有無を調べた。その結果,付着細菌,遊離細菌共に,proteobacteria betaおよびalpha subgroupの細菌が優占しているが,両者の群集構造は大きく異なることが明らかになり,スライムへの付着に際しては,細菌/Microcystis間の相互関係に起因する何らかのセレクションが起こっている可能性が示された。また,付着細菌の中で細胞外プロテアーゼ活性を有する細菌はMicrocystisの大増殖前の春季と消滅期の秋季には,分離菌株の50%程度を占めていたが,夏季の大増殖期間中には,その割合が20%以下と著しく減少した。以上の結果は,夏季に活発に増殖するMicrocystisから放出されたプロテアーゼインヒビターの作用により,プロテアーゼ活性を有する細菌群の増殖が阻害された可能性を示唆している。また、Anabaenacilindricaの殺藻活性を指標として溶藻細菌のスクリーニングを行ったところ、霞ヶ浦からBacillus属の細菌を単離する事ができ、細菌の大量培養菌体からサルファクチンを殺藻の活性本体として単離することができた。この細菌のプロテアーゼ活性については現在検討中であり、今後の課題である。さらに、糸状性藍藻OscillatoriaからカルボキシペプチダーゼA阻害物質としてアナバエノペプチンGおよびHを単離・構造決定することができた。このペプチドは、カルボキシペプチダーゼAを強力に阻害した。アナバエノペプチン類は他の糸状性藍藻からも得られており、その生態系の中で果たす役割に興味が持たれる。
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