研究概要 |
本研究では、自然生態系での大気由来のNO_2吸収の実態を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。1.NO_2沈着フラックスおよび沈着速度(K_<NO2>)を長期・連続的に測定するシステムを構築し、アカマツ林(樹高約15m)および作物畑において連続測定を実施した。 2.草本作物群落(ダイズ,コムギ,トウモロコシおよびイネ)およびアカマツ群落におけるNO_2フラックスおよび沈着速度の日変化(正午頃に最大)は日射量の影響が大きいことがわかった。 3.同じ植物群落でも沈着速度の大きさにはガス種による差異が認められ,K_<NO2>よりもK_<O3>の方が大きいことがわかった。 4.草本植物群落の場合、K_<NO2>は0.5〜1程度の値であることがわかった。、アカマツ群落の場合、5〜6月および10〜11月に1〜2程度であり、7〜9月ではその5〜10倍程度の大きさであることがわかった。 5.アカマツ群落におけるNO_2フラックスおよび沈着速度の季節変化は、主に気温の影響が大きいことがわかった。 6.アカマツ群落において、夏季に著しく大きいNO_2フラックスおよび沈着速度は、マツ葉に吸収されることだけでは説明できず、マツ葉から放出されるテルペン類や林床から放出されるDMSなどの還元性含硫物質との化学反応も関与していると推察された。 7.推定平均値(5〜11月)および推定(12〜4月)をもとにすると、各月の沈着フラックスは以下のようである(いずれも、gNO_2/m^2/月の単位):1月=0、2月=0、3月=47、4月=80、5月=106、6月=106、7月=399、8月=1726、9月=480、10月=106、11月=96、12月=4。 8.アカマツ林およびコムギ・ダイズ輪作畑の年間沈着量は、それぞれ約3.2および約0.9kgNO_2/m^2/年と推定され、アカマツ林には畑の約3.6倍量のNO_2が沈着していると推定された。
|