研究概要 |
本研究は,ティラピアの閉鎖生態系循環式飼育システムの構築を目的に,微細藻類,動物プランクトンおよび魚類の各種間のガス交換および物質循環を行い,水圏系内において,生物間の食物連鎖を利用することにより,それらの効率化を図ることを目的に,種々の基礎的データの集積を図った。まず,密閉式魚類飼育装置を用いて,魚類飼育時の水質変動,限界放養量の推定などの基礎的データを集積した後,光周期の違いとティラピアの酸素消費量との関係を調べたところ,明期と暗期の回転が速く(24L:24Dから3L:3Dへ)なると,酸素消費量が増加するとともに,体重が100gの魚に比較して10gの方がより酸素を消費することが分かった。次に,同じ装置を用いて,6ヶ月間の長期飼育を行ったところ,体重11gの魚は最終的に470gの成魚に達し,本装置による無換水実験に成功した。また,その飼育排水の成分が微細藻類の培養に適しているかを検討したところ,窒素は飼育水中のもののみで十分利用できるが,リンはアパタイトの形態であることから,そのままでの利用は困難であることが分かった。また,ティラピアはふ化直後からスピルリナやユーグレナのみで,成魚まで飼育可能なことが初めて分かった。その際,乾燥スピルリナよりも生の方がティラピアの生育に有効であること,クロレラは細胞壁が厚く仔魚にとって消化しにくいことなども明らかにした。さらに,ユーグレナの増殖速度を促進する光環境条件を検討した結果,青色光と赤色光の光量子束比が1:4で,光合成有効光量子束が90μmol m^<-2>s^<-1>の時が最適であることがわかった。その他,藻類-動物プランクトンの系による循環式培養装置の開発なども実施した。 本研究から,藻類-動物プランクトン,藻類-魚類の系が閉鎖系で構築できる基礎的データが得られた。
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