研究概要 |
我々の研究目的は大別して二つの目的がある。即ち、1)赤血球膜の陰イオン交換輸送蛋白質バンド3蛋白質について、陰イオン透過の分子機序を解明すること、及び、2)バンド3蛋白質の研究を基盤として、ポリトピック型膜蛋白質の膜への組み込みと膜内での機能構造形成に関する一般的な知見を加えることである。このような目的を踏まえて行った具体的研究とその成果を以下にまとめる。 ポリトピック型膜蛋白質であるバンド3蛋白質の構造と機能との相関を、(a)細胞膜内in situで蛋白質化学的解析を主体として、併せて、(b)膜蛋白質の生合成機構を小胞体を用いたin vitroの系で、総合的に明らかにしようと試みた。平成10年度で、ポリトピック型膜蛋白質であるバンド3蛋白質の小胞体における生合成の過程は、一回膜を貫通しているバイトピック型膜蛋白質と異なる機序で膜へ組み込まれていることを実証する結果を得ることができ成果を発表した(Mol.Cell 2,495('98);J.Biol.Chem.273,28286('98))。その違いのポイントは、アミノ末端側を膜内へ引き込むシグナルを持つペプチド領域(I型シグナルアンカー配列、SA-I)があることである。平成11年度は、SA-I活性を持つ膜貫通ペプチドが他の膜貫通ペプチドと小胞体での生合成過程で相互作用を起こしている事を示す結果を実験的に証明できた(論文投稿中)。 さらに、最近の我々を含めた世界各地の研究ではそのような必須のアミノ酸を含む膜貫通領域の膜内存在様式が他の部分と異なることをも実験的に示唆された。このような結果を踏まえて、我々はバンド3蛋白質の膜内存在様式について新しい概念を提唱している(J.Biochem.122,577('97);Biochem.Cell Biol.76,729('98);生物物理39,240('99))。
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