研究概要 |
TRF1,2(telomeric-repeat binding factors)は、ヒト染色体末端のテロメアDNAに結合する蛋白質として知られており、TRF1はテロメア長を負に制御し、TRF2はテロメア末端を保護し染色体のend to end fusionを阻害する。また、TRF1のADP ribosyl化によりTRF1とテロメアDNAの結合を阻害し、テロメア長の調節に関与する蛋白質としてtankyrase(TRF1-interacting,ankyrin-related ADP-ribose polymerase)が報告されている。本研究では、ヒト胃癌組織20例において、これらテロメア構成因子の発現を解析し、また同時にテロメラーゼ活性、テロメア長、テロメラーゼ触媒サブユニットTERT、テロメラーゼRNA成分TERC、テロメラーゼ付属蛋白TEP1の発現との相関を調べ、癌化への関与を検討した。 その結果、TRF1で10例(50%)、TRF2で13例(65%)、tankyraseで11例(55%)において、非腫瘍部粘膜に比較し腫瘍部でmRNA高発現が認められた。また、症例をテロメア長が2kbよりも長い群、短い群に分け比較すると、長テロメア群ではテロメラーゼ活性は低く、TRF1は低発現、tankyraseは高発現、一方、短テロメア群ではその逆の関係が認められた。TERT,TERC,TEP1発現との間には明らかな相関は見られなかった。以上より、癌細胞においてTRF1,2,tankyraseがテロメア長ならびにテロメラーゼ活性を制御している可能性が考えられる。
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