研究概要 |
この研究ではウイルス感染や抗腫瘍作用に役割を果たしていることが知られるようになったIRFファミリーや同様の作用をもつTNFの肝臓や膵臓での病態の関与について検討した。用いたのはp.acnes死菌で感作し、1週後にLPSを投与することにより誘導される肝臓障害モデルと、ウイルス感染類似の応答を引き起こす合成二重鎖RNAによる刺激である。 これらの実験から以下のことが明らかにされた。 1)IRF-1KOマウスが肝臓障害モデル実験に対して非常に感受性が高いことが判明したが、肝臓での単核球浸潤、肉芽形成能においては著明な差を認めなかった。ところがTNFの産生はIRF-1KOマウスでは野生型に比べて早く終焉すること、一方Fas ligandの発現は低いことが見出されFas-Fasligandとは異なる別の経路が存在することが明らかとなった。(Tomoko Kohno,et al.,投稿準備中) 2)TNFレセプターp55KOマウスはp.acnesでプライミングしてLPSで刺激をする肝障害モデルに置いて抵抗性が強いことからTNF-TNFレセプターの関与も大きいことが証明された。さらにこの際にT細胞遊走活性をもつケモカインであるMIP-3αが誘導されてくること、この誘導には転写因子NF-_KBの関与が不可欠なことを証明した。(Shinichi Sugita,et al.,投稿中) 3)TNF-TNFレセプターを介してIRF-1の転写誘導がおこるが、この過程には転写因子NF-_KBがかかわっている。IRF-1のプロモーター領域の解析によって、IRF-1のプロモーターには未知のNF-_KBの応答配列があり、これはインターフェロン刺激への応答にもかかわっていた。(Daisuke Imanishi,et al.,J Immunol.165,3907-3916,2000) 4)IRF-2KOマウスはウイルス感染類似刺激となる合成2重鎖RNAによって肝臓ではなく膵臓の方に急性障害をおこし、電顕所見からそれが典型的なアポトーシスによることが証明された。興味深いことに野生型マウスにIRF-2アンチセンスを投与して同様の刺激をおこなうと程度は軽いものの再現性よく膵臓にアポトーシスが誘導される。これは生理的にIRF-2産生が低下するような状況がおこればウイルス感染刺激で急性膵炎が誘導されることも示唆しており、現在まで原因不明とされていた急性膵炎の発症機序に迫る研究成果を得ることとなった。(Hiroyuki Murota et al.,投稿中)
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