配分額 *注記 |
9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1998年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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研究概要 |
自然環境水を生息域とするビブリオ属菌には数種の病原種が含まれているが,いずれも種々の分泌性毒性因子を産生している。これらの病原因子は単独で症状を惹起することは少なく,相互に作用しあい,あるいは補完的な作用をしている場合が多い。本研究は主としてVibrio vulnificusやV.mimicusなどの病原ビブリオが産生する溶血毒,プロテアーゼ,シデロフォア,さらにはエンテロトキシン等の病原因子の病原性発現における相互・相補作用の検討を行い,病原性の発現を総合的に捉えることを目的として研究を行った。 本研究で特に注目したものは溶血毒素とプロテアーゼの相互作用である。V.vulnificusのような全身性の疾患を起こすビブリオでは,プロテアーゼが皮膚血管透過性を亢進するなどの直接的な毒性因子として働くが,V.mimicus等下痢症を惹起するビブリオではプロテアーゼ自身が腸管での直接的な毒性には結びつかず,腸管粘膜を変性させて菌の定着に影響を与えたり,他のタンパク毒素を限定分解して活性化あるいは逆に失活させるなどの影響を与えて間接的な作用を示すことが多い。 本研究でV.mimicusの下痢因子として働く溶血毒素を自身が産生するプロテアーゼで処理すると溶血活性はあまり大きくは減少しないものの,下痢原性はほとんど失われてしまうこと,一方V.vulnificusでは溶血毒素は下痢惹起作用を持たず,プロテアーゼ作用の影響は人に病原株を示す生物型1と魚に病原性を示す生物型2とで異なることが示された。このような違いが両病原種の病原性の相違となって表れているとも考えられ,各々の病原性発現機構を解明する上においての重要な情報を提供し得たと考えられる。
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