配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1998年度: 5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
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研究概要 |
麻疹ウイルスワクチン株に対する細胞受容体は,補体制御因子の一つであるCD46であることが既に示されている。しかし,マーモセット由来のB細胞株であるB95a細胞を用いて高率に分離されるようになった麻疹ウイルス患者分離株(野生株)はCD46陽性細胞で増殖しない。本研究では,先ずワクチン株と野生株のこのようなトロピズムの違いが麻疹ウイルスのエンベロープ蛋白の一つであるH蛋白のアミノ酸の違いによって決定されていることをsite-directed mutagenesisによって明らかにした。次いで,麻疹ウイルスのH蛋白とF蛋白を持つ水庖性口内炎ウイルス(VSV)のpseudotypeを用いた,種々の細胞に対する細胞侵入効率の解析により,ワクチン株と野生株のトロピズムの違いは細胞侵入過程でほとんど決められていることを明らかにした。この結果から,野生株に対する受容体はCD46ではなく,野生株が感染できる限られたリンパ球系細胞にのみ発現している分子であると結論した。そこで,野生株が高率に感染するB95a細胞のcDNAライブラリーを作製し,上記のVSV pseudotypeを用いて発現クローニングを行なった。得られたクローンはヒトのSLAM(CDW150)と高い相同性があった。ヒトSLAM遺伝子をクローニングして野生株に非感受性の細胞に導入すると,野生株ウイルスが吸着し,増殖できるようになった。フローサイトメトリーでSLAMの発現を解析したところ,野生株に感受性があるリンパ球系細胞はすべてSLAMを発現しており、非感受性の細胞は発現がないか、あってもごく低レベルであった。また,野生株の感染は抗SLAM抗体で完全に阻止できた。これらの結果から,ヒトSLAMが麻疹ウイルス野生株に対する受容体であることが証明された。重要なことに、ワクチン株もCD46だけでなくSLAMを受容体として使えることも分かった。SLAMは免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する膜蛋白であり,細胞外ドメインとしてVドメイン,C2ドメインを持っている。種々のキメラ分子の解析からSLAMのVドメインが麻疹ウイルスに対する受容体としての機能に必要十分であることが明らかになった。
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