配分額 *注記 |
13,100千円 (直接経費: 13,100千円)
2000年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1999年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1998年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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研究概要 |
過去2年間の研究により、インフルエンザウイルスの宿主域変異の分子機構に関して極めて重要な結果が得られた。すなわち、 1)ヒトからMDCK細胞により分離されるウイルスは、SAα2-6Galβ1-(以後2-6と記述)を特異的に認識するが、トリやウマから分離されるウイルスはSAα2-6Galβ1-(2-3)結合に強く結合し、2-6への結合は弱い。一方、ブタから分離されるウイルスは2-3,2-6いずれにも結合できる。 宿主であるヒト上気道には2-6結合が、ウマ上気道、カモ腸管細胞には2-3結合が存在すること、ブタ上気道には2-3,2-6の両者が存在することを認めた。これらの結果から、ブタがトリおよびヒトウイルスの中間宿主であることを受容体分子レベルで明らかにした。 2)ウマ気道上皮細胞には、特異的にNeu5Gc2-3Gal結合を持つシアロ糖鎖(ウマインフルエンザウイルスが結合する受容体シアロ糖鎖)が存在することを見いだした。同時にNeu5Gc2-3Galβ1-糖鎖への結合性の獲得には、ヘマグルチニン分子内の2つのアミノ酸置換、Leu226→GlnおよびSer228→Glyが必須であることも明らかにした。特に、N-グリコリルイラミン酸に対する認識の獲得にはSer228→Glyの置換が必須であることを見いだした。そして、ヒトから分離されたウイルス[A/Udon/307/78(H3N2)、これはウマへ感染できない。ヘマグルチニン分子内の226,228番のアミノ酸はそれぞれLeu,Serである]のヘマグルチニン分子内の2つのアミノ酸置換、Leu226→GlnおよびSer228→Glyを人工的に導入したウイルスは、実際にウマに感染・増殖できる性質を獲得していることを動物レベルで証明した。本実験は、もし、自然界でヒトインフルエンザウイルスヘマグルチニンに上記のアミノ酸置換が起こった場合、宿主の壁を越え、ウマへの伝播が可能となることを示すものである。 以上、本研究で得られた成果は、ヒトと動物間のインフルエンザウイルス伝播機構が、受容体シアロ糖鎖の結合様式(2-3,2-6)、シアル酸分子種(Neu5Ac,Neu5Gc)と深い関わりがあることを、ウイルスヘマグルチニン遺伝子および受容体分子のレベルで初めて明らかにしたものであり、インフルエンザウイルスの宿主域変異機構の解明に大きく寄与するものである。
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