研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン痴呆複合(PDC)は,グアム島と紀伊半島に多発する.ALS/PDCは神経病理学的に神経原線維変化が認められることを特徴とする.ALS/PDCの頻度は多発する原因が明らかにされないまま1980年までに減少したと報告されていた.我々は,多発地区の1つである穂原地区における実地調査で1980年以降もALS/PDCが多発していることを明らかにした.1985〜1997年に21例がALS/PDCを発症した.70%以上の患者に家族歴が認められた.6例のALS/PDCを神経病理学的に検討したところ,ALS,PDCともに同様の所見を認め,神経原線維変化が多発していた.このことから,ALSとPDCは異なった臨床症状を示すが,同一の疾患であると考えられた.12例のALS/PDCにおいて,アルツハイマー病の危険因子であるアポリポ蛋白E遺伝子多型,パーキンソン病の危険因子であるCYP2D6遺伝子多型,進行性核上性麻痺の危険因子であるタウ遺伝子多型,家族性ALSの原因遺伝子であるSOD1遺伝子,17番染色体に連鎖する前頭側頭葉型痴呆の原因遺伝子であるタウ遺伝子を検討したが,いずれも異常はなかった.
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