研究概要 |
我々はこれまでに臨床的に異なる日本人の多発性硬化症(MS)の2つの病型において、疾患感受性あるいは抵抗性HLAクラスII対立遺伝子を報告してきた。今回ミエリン蛋白であるMBP,PLP,MOGより、オーバーラッピングペプチド全64種類を合成し、これを抗原としてミエリン蛋白自己反応性T細胞株を樹立し解析を行った。健常者に比べMS患者ではエピトープの拡大が認められた。それぞれのミエリン蛋白由来ペプチドに対する反応性の検討では、西洋型MSではMBP,PLP,MOG全てに幅広く反応性を示すのに対し、アジア型MSではMOG優位な反応性とエピトープの拡大傾向を認めた。疾患感受性を示すHLAクラスII分子は、そのアミノ酸配列よりアジア型と西洋型とでは結合するペプチドが全く異なること、BNラットのMOGでのEAEの誘導では視神経脊髄型を来すことから、アジア型でのMOGに対する優位な反応性、あるいはエピトープの拡がりが、病型の形成に関与するものと考えられた。今回、アジア型MS患者1名よりDP5拘束性自己反応性T細胞クローンを樹立し、196MBP84,86,87,89,90番目のアミノ酸がDP5との結合、あるいはTCRによる認識に関与することがわかった。これらの情報を基に、アンカー部位を同定し、それ以外を他のアミノ酸に置き換えたランダムペプチドライブラリーに対応するオリゴヌクレオチドで、インバリアント鎖遺伝子のCLIP部位を置換し、これをDP5遺伝子と共にcos-7細胞にトランスフェクトすることにより、多様なペプチドを結合するDP5分子を細胞表面に発現する細胞集団が作製できる。この細胞集団を用いることで、今後、アジア型MSに特異的な原因抗原蛋白の探索が可能となると思われた。
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