研究概要 |
我々は、今回の一連の実験において、慢性拒絶により拒絶されるAKR(H-2k)→C3H(H-2k)の組み合わせと共同研究者が開発したマウス頸部異所性心移植モデルをもちいて移植後の冠動脈閉塞性内膜肥厚の機序を解析した。その結果、150日程度移植心が生着するにもかかわらず移植後2週目にはすでにリンパ球の冠動脈周囲への浸潤及び内膜肥厚の開始が観測された。初期の免疫刺激によりその後の冠動脈閉塞性内膜肥厚が決定ずけられること、及び拒絶反応は冠動脈周囲より始まることが明らかとなった(Zhang et al,submitted.for publication)。また、CP誘導性免疫寛容により寛容状態が誘導された心移植片にはキメラ状態の存在の有無にかかわらず閉塞性冠動脈病変は生じないことも明らかとなった(Zhang et al,Submitted for publication)。また、(2)我々がマウスにおいて開発したIn vitroにおける免疫寛容系(Transplantation,1986)は豚リンパ球を用いても寛容誘導が可能であった(Gu et al.Manuscript in preparation)。ミニ豚を用いたin vivoの実験であるが、豚においてはCP200mg/kgは致死以上の線量であり、CP100mg/kg以下の投与が必要であることが明らかとなった。(3)マウスにおいてMHC抗原の壁を越えて皮膚移植片に対する免疫寛容実験系を確立することが出来、その最低薬剤量はCPが200mg/kg、BUが25mg/kgであることが明らかとなった(Y.Tomita et al,submitted for publication)。また、SC_+100mg/kgCPにて中等度の心臓移植片生着延長効果を得ている。こうした結果の中で、以下のような結論をえた。(i)皮膚移植片寛容誘導が可能なminor抗原のみ違う組み合わせにおける心移植片に対する寛容状態の誘導の有無:皮膚移植片に対する寛容状態を誘導するにはアロ脾細胞_+CP200mg/kgが必要であるが、心移植片に対する寛容状態を誘導するにはアロ脾細胞_+CP100mg/kgで可能である。寛容状態が誘導された心移植片にはキメラ状態の存在の有無にかかわらず閉塞性冠動脈病変は生じない(Tomita,et al.Transplantation 1997,Zhang,et al,submitted for publication).(ii)CP誘導性免疫寛容で観察されるキメラ状態の質的量的解析:非移植抗原であるLy5(CD45)抗原のみの違うCongenicマウスを用いて解析を行ったところ、本寛容系で誘導されるキメラ状態はリンパ系のみであり、骨髄レベルではないことが明らかとなった(Yoshikawa et al,Transplant Proc 1998,1999,Immunobiology,In press)。(iii)CPの分割投与による副作用軽減効果の試み:3分割(66mg/kg x3)投与によっても本寛容系は誘導可能であり、3分割することにより細菌(Pseudomonas菌)に対する感染抵抗性が得られた(Zhang,et al.Transplantation 1997).(iv)MHC抗原の違うB10.D2(H-2d)→B10(H-2b)においてキメラ状態・皮膚移植片寛容状態の誘導:(ii)の結果に基き骨髄抑制作用のより強いBusulfan(BU;致死量250mg/kg)+Donor骨髄細胞をCP誘導性免疫寛容に加えることにより、永久的なキメラ状態と皮膚片に対する寛容状態を誘導することが可能となった(Tomita et al,submitted for publication)
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