研究分担者 |
川口 三郎 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70024635)
富永 篤 広島大学, 医学部, 助手 (60274049)
栗栖 薫 広島大学, 医学部, 教授 (70201473)
井上 辰志 広島大学, 医学部・附属病院, 助手 (80304434)
家 勇司 国立病院四国がんセンター, 厚生技官(研究職)
平家 勇司 国立病院四国がんセンター, 厚生技官(研究職)
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研究概要 |
哺乳動物の中枢神経伝導路は,従来再生しないとされるが,平成10,11年度の本研究により,従来の定説を覆して,極めて著しい再生が起こることが明かとなった.その中で,再生が起こる例と,起こらない例との間で,グリオーシスが極めて重要な役割を果たしており,グリオーシスを抑制できれば,例え成ラットでも,極めて良好な再生が可能であることが明かとなった.これに着目し,遺伝子導入により,細胞周期を調整できれば,グリオーシスを抑制し,著明な再生が可能になると考えた.そこで着目したのが,Nijmegen breakage syndromeで変異を認めるNBS1である.NBS1はB-cell lymphomaの抑制遺伝子である可能性があり,抑制遺伝子であるかどうかを検討した.結果は予想に反して,否定的な結果となった. アデノウイルスベクターは,細胞周期調節遺伝子を脳・脊髄に導入する手段であり,実際に脊髄注入を行った.その結果,脊髄の局所のみでなく,脈絡叢や大脳基底核など,広い範囲にわたって,その発現が確認された.従って適切な細胞周期調節遺伝子が導入されれば,グリオーシスが抑制され,著明な再生が誘導される可能性は依然大きいと考えられる.またアデノウイルスベクターによる毒性はなく,投与量を適正に設定すれば,特に中枢神経への直接の注入の場合には,安全であると考えられた. 本研究によりアデノウイルスベクターは,将来,脳脊髄損傷の治療手段として極めて有望であることが明かとなった.
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