研究課題/領域番号 |
10470302
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
整形外科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 耕三 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60126133)
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研究分担者 |
川口 浩 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (40282660)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
8,700千円 (直接経費: 8,700千円)
1999年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1998年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | fibvoblast grouth factov-2 / 破骨細胞 / 骨吸収 / MAPキナーゼ / fibroblast growth factor -2 / 成長因子 |
研究概要 |
FGF-2はその強力な薬理作用としての骨形成促進作用が知られているが、その一方では慢性関節リウマチ患者の関節破壊に関与するなど、骨吸収促進因子としても注目されている。本研究では、FGF-2の成熟破骨細胞に対する直接作用機構を検討し、更に骨芽細胞系細胞を介する間接作用と比較することによって、FGF-2の多様な骨代謝調節メカニズムを解明することを目的とした。 まず、ウサギ全骨細胞およびウサギ単離成熟破骨細胞の骨吸収活性に対するFGF-2(10^<-17>〜10^<-8>M)の効果を、形成された吸収窩の面積によって比較検討した。全骨細胞ではFGF-2の濃度によって2相性の促進作用が見られ、10^<-12>〜10^<-10>Mの濃度で約2倍に促進され、10^<-9>M以上の濃度で更に約10倍に促進された。この高濃度での促進作用は、COX-2の選択的阻害剤であるNS-398により有意に抑制された。一方、成熟破骨細胞では2相性の促進効果は見られなかったが、10^<-12>M以上の濃度で約2倍に促進された。この成熟破骨細胞に対するFGF-2の促進効果はNS-398によって全く抑制されなかった。次に、マウス単離成熟破骨細胞におけるcathepsin KとMMP-9の発現を検討したところ、これも10^<-12>以上の濃度のFGF-2で有意な促進が認められた。この誘導もNS-398によって全く抑制されなかった。骨芽細胞と破骨細胞におけるFGF受容体(FGFR)の比較を行ったところマウス骨芽細胞ではFGFR1,2,3,4のすべてが発現していたのに対し、マウス単離成熟破骨細胞ではFGFR1のみが発現していた。次にチロシンリン酸化の検討を行ったところ、成熟破骨細胞においてFGF-2刺激によってFGFR1の自己リン酸化を含む複数のタンパク質のチロシンリン酸化が促進された。さらに下流のMAPキナーゼの内、p42/p44MAPキナーゼの強力なリン酸化が確認された。FGF-2によるウサギ単離成熟破骨細胞の骨吸収活性促進効果、およびマウス単離成熟破骨細胞でのcathepsin KとMMP-9の発現促進効果はともに、p42/p44キナーゼの選択的阻害剤であるPD98059を投与することによって、用量依存性に抑制された。以上のことから、FGF-2の成熟破骨細胞に対する効果は、FGFR1のリン酸化とその下流のp42/p44MAPキナーゼの活性化を介することが明らかとなった。 今回の検討を含む現在までの検討で、FGF-2は高濃度において骨芽細胞に作用し、未分化な間葉系細胞増殖を促進することによって骨形成を促進すると同時に、COX-2誘導を介して間接的に骨吸収を強力に促進することが示された。また、低濃度においては破骨細胞に直接作用しFGFR1,2からの複数のタンパク質のチロシンリン酸化を促進することによって骨吸収促進作用を呈することが示唆された。これらのメカニズムはFGF-2の薬理的、生理的、病理的な骨代謝調節作用の多様性の原因の一つと考えられる。
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