研究課題/領域番号 |
10470400
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
病態科学系歯学(含放射線系歯学)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (20193211)
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研究分担者 |
池田 やよい 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (00202903)
安達 三美 (玉盛 三美) 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (10323693)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
13,600千円 (直接経費: 13,600千円)
2000年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1999年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1998年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
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キーワード | 口腔癌 / 転写仲介因子 / p300遺伝子 / 癌抑制遺伝子 / ヒストンアセチル化酵素 / ブロモドメイン / TGFβ / 細胞増殖 |
研究概要 |
口腔癌発症の分子機構を解明するためには、癌化に関与している遺伝子の検索、同定を行うとともに、その機能を明らかにする必要がある。本研究では、遺伝子の転写制御に重要な役割を果たしている転写仲介因子p300のヒト細胞の癌化における役割について解析をおこなった。 p300は、ウイルスの癌タンパク質に結合する因子として同定され、細胞の増殖、分化および細胞死などさまざまな過程に深く関与している。p300は転写因子と基本転写因子の双方に結合し、それらの機能の仲介することにより転写の活性化に関与する。また、ヒストンをアセチル化する酵素活性(HAT活性)をもち、転写に必要な染色体の構造変換(リモデリング)をすることが知られている。p300が癌抑制遺伝子としての性質をもつ可能性は以前から指摘されており、最近、ヒト癌細胞において突然変異が報告された。しかしながら、ヒト細胞癌化におけるp300の役割はほとんど明らかにされていない。 本研究では、口腔癌1株を含む2株のヒト癌細胞から正常対立遺伝子の不活性化を伴うp300遺伝子の突然変異を発見した。それらの変異により、p300タンパク質の転写仲介因子能と染色体リモデリング機能に必要な領域に欠失が生じることを示した。また正常p300を欠く上記2株の癌細胞に野生型p300遺伝子を導入することにより、p300が癌細胞の増殖を抑制する機能があることを明らかにした。さらにそれらの癌細胞では、上皮細胞の増殖を抑制するTGFβに対する応答性を失っていることを見出し、正常p300を導入すると失われた反応性が回復することを示した。 以上の結果、本研究は、p300が癌抑制遺伝子として働くことを示す初めての実験的な証拠を示した。また、p300がTGFβの応答に関与する転写制御に必須な転写仲介因子であるということを見出した。口腔悪性腫瘍の大半が癌腫であること、口腔癌細胞から実際にp300の変異が検出されたことから、本研究で得られた成果は、口腔癌の多段階発癌過程を解明するうえにおいて、重要な知見をもたらすと考えられる。
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