研究概要 |
咀嚼機能障害に関わる咬合因子を解明するために,12名の健常被験者の側方咬合状態を実験的に変化させてブラキシズムを想定した側方咬合位での咬みしめを行わせ下顎の変位量と咀嚼筋活動を測定した.側方咬合状態は実験装置を用いて犬歯誘導,作業側咬頭干渉,平衡側咬頭干渉,両側性平衡咬合の4つの側方咬合接触状態をシミュレートした.各被験者に対して咬筋並びに側頭筋前部・後部から導出された表面筋活動電位を測定すると同時にそれらの加算値を視覚的にフィードバックし,各実験条件間で咬みしめ強さが一定になるようにした.下顎変位は差動変圧器式変位計測装置を用いて測定した. 筋活動については側方咬合接触関係の変化により側頭筋に変化が認められ,前後部とも作業側で優勢であった活動傾向が,平衡側咬頭干渉により両側性の活動パターンとなった.また,下顎の変位のパターンは,犬歯誘導,作業側咬頭干渉では平衡側歯列の挙上量が大きくなり,平衡側顎関節部により強い圧力が生じている様相が伺われた.両側性平衡咬合では,下顎の変位量は他の条件に比較して最小となり前者に比較し平衡側顎関節部に生じる圧力が減少していると推察された.平衡側咬頭干渉では特異的に作業側歯列の大きい上方変位が全被験者において観察され,このとき作業側顆頭に大きな圧力が生じていると推察された.したがって,側方咬合接触状態は,閉口筋活動パターンと下顎の挙上により顎関節部に生じると考えられる圧力にも影響を及ぼしていることが示唆され,特に平衡側咬頭干渉によるそれらへの影響は特徴的であった.以上の結果は顎機能異常の発症因子とされる平衡側咬頭干渉の作用機序を考える上で有効な示唆を与えるものと考えられる。
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