研究概要 |
象牙質の形成に関わる分化・成長因子が歯髄刺激時に産生され,歯髄細胞,特に象牙芽細胞が活性化されることにより,いわゆる修復象牙質が形成されると考えられている。本研究ではこの自己組織修復能力を活用した歯質保全療法の開発を目指して,修復象牙質の形成の際に特異的に発現している遺伝子の同定ならびに当該遺伝子の導入が可能であるかを検討した。 平成10年度では,歯に窩洞を形成したときの歯髄細胞に発現する特徴的遺伝子の検出をsubtractive hybridization法で行った。その結果,14のクローンが解析できた。 平成11年度では,ラット臼歯に歯髄に達する禽洞を形成し,LacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入,窩洞を接着性レジンで密閉した。*週後にラットを屠殺し,歯髄細胞におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ露髄面に接する象牙芽細胞の*部に遺伝子導入が確認された。しかし,遺伝子導入率がきわめて低かった。この結果は露髄面にウイルス液を注入してもすぐに拡散してしまい一定時間ウイルスを感染させることができなかったためであると考えられた。今後は経時的にウイルスが徐放されるシステムを確立する必要があると考えられた。また,ラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZ遺伝子に対するprimerを用いてRT-PCRを行うことで他臓器に影響があるか確認したところ,他臓器への感染は認められなかった。
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