研究概要 |
1936年にCahnが義歯性口内炎とデンチャープラーク中のC.albicansとの関連について報告して以来,それらの関係について様々な研究が行われてきた。一方,C.albicansが象牙質齲蝕や根面齲蝕の病巣から高頻度で分離されるという報告や,難治性の歯周疾患の歯肉縁下,あるいは,難治性の根尖病巣から分離されるという報告があり,口腔内で生じる様々な疾患に関与する可能性について注目されている。さらに,オーバーデンチャーやパーシャルデンチャーの装着が根面齲蝕の羅患や助長に関連があるという報告や,パーシャルデンチャー装着者は健常歯列者に比べて根面齲蝕の羅患率が有意に高いことが報告されている.したがって本研究では,まずC.albicansおよび口腔内細菌のHAPおよび1型コラーゲンに対する定着について検討を行い,次にC.albicansと数種の口腔内細菌を用いて、その直接の共付着・凝集の定量化および共付着・凝集に関与する培養条件の検討を行った。本実験から得られた結果からC.albicansはHAPに対し著しく高い付着能を示し,血清存在下においてHAPおよびI型コラーゲンに対し高い定着能を示すことが明らかとなった。また,このような血清存在下ではS.mutansやS.sanguisは定着能を失い,歯肉や歯周組織の炎症に伴い,歯根面において菌の交代現象が引き起こされC.albicansる可能性が高いことが示された.また,C.albicansは培養条件により共凝集を起こす細菌がまったく異なっており,この機構により口腔内のプラーク叢に結合したり逃避することにより伝搬していく可能性が示唆された.
|