研究概要 |
平成11年度は新たに歯周炎患者21名,健常者15名について,培養ヒト歯肉線維芽細胞(GF)および培養ヒト歯周靭帯由来繊維芽細胞様細胞(PLF)を抗原として末梢血血清中の自己抗体(IgG)を検出すると共に,自己抗体産生メカニズムを明らかにする目的で,Parvovirus B19感染との関係および歯周病患者のHLA class II抗原の遺伝子型を解析した. 1.Parvovirus B19 (PVB19)感染と歯周炎患者の自己抗体産生との関わり PVB19感染はPVB19の合成ペプチド抗原に対する抗体をELISA法で測定することによって明らかにした.歯周炎患者は健常者に比較してPVB19に感染している者が多かった.GFあるいはPLFに対する自己抗体を有する患者は全てPVB19に感染している患者であり,PVB19に感染していない患者には自己抗体産生する患者は見出せなかった.伝染性紅斑,再生不良性貧血およびバージャー氏病や自己免疫疾患である慢性関節リウマチを有する歯周炎患者は全てPVB19に対する抗体価が高く,それら患者はGFあるいはPLFに対する抗体価も高かった. 2.自己抗体を産生する歯周炎患者のHLA class II抗原の遺伝子型 GFあるいはPLFに対する自己抗体を産生する患者から末梢血リンパ球を分離し、HLA class II抗原(DQ抗原)の遺伝子型をPCR-RFLP法によって決定した.自己抗体価の高い歯周病患者の HLA class II 遺伝子は、健常者と比較するとDQA1^*0101,DQA1^*0501,DQB1^*0503の出現頻度が高かった. 自己抗体産生は歯周病組織破壊を亢進する原因の1つと考えられるが、自己抗体産生に至るメカニズムは、HLA遺伝子型に代表される遺伝性を有する患者に歯周組織局所で繰り返させる細菌感染、ウイルス感染(環境因子)が重なることによって惹起される可能性を示した.
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