研究概要 |
1.種々のシクロデキストリン(以下CDと略)2分子を,その水酸基(2-OH,3-OH,6-OH)の選択的活性化を通して,その位置でジスルフィド連結し,二量体(17種類)を合成した.これらの二量体が,水中で細長い形状のゲスト分子メチルオレンジを包接する能力を求めた結果,平衡定数には大きな差(1,500〜606,000M^<-1>)があることが明らかとなり,最高の包接力を示すものは,α-CDのC3とβ-CDのC6を連結した二量体(606,000M^<-1>)及びβ-CDのC6同士を連結した二量体(583,000M^<-1>)であると判明した.この結果,触媒基を導入して人工酵素を創製する素材としては,合成の簡便さを考慮して,後者の二量体が最適と判断した. 2.β-CDの6A,6B-〜6A,6D-ジヨード化体を原料にして,特定位置にIm基とSH基を持つβ-CDを合成した.これを酸化しジスルフィド結合で連結し人工酵素(ジIm-CD二量体,6種)を得た.さらに,二量体の一成分に無修飾CDを採用したモノIm-CD二量体6種,Im-CD(単量体)も比較のため合成した. 3.2つの部分がCDに認識されるエステルを基質として,中性の水中で上記のImを持つCDの加水分解触媒作用を検討した.Im-CDとモノIm-CD二量体の触媒反応定数はほぼ同じだが,後者は基質捕捉能力において前者を10倍上回り,モノIm-CD二量体とジIm-CD二量体は基質捕捉能力はほぼ同じだが,触媒反応において後者は前者を4倍上回る.結果として,ジIm-CD二量体のAF異性体は,無触媒加水分解の約1,000倍の加水分解速度を示す.そして,触媒としてturn-overし,生成物阻害は無く,中性付近のpHでは,pHを変化させても活性は変化しない. 4.以上のことから,本研究のスーパー人工酵素創製の基本戦略は正しく,天然酵素より優れた機能を持つ人工酵素創製が可能であるとの示唆を得た.
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