研究概要 |
小学校における「算数科」は戦前の「理数科算数」との連続性の上に立って,戦後新たに成立した教科であり,昭和22年3月20日に発行された『学習指導要領一般編(試案)』において初めて明示され,同年3月31日に公布された「学校教育法」(法律第26号)及び5月23日の「学校教育法施行規則」(文部省令第11号)によって正式に定められた教科名である.しかし,算数科の内容は昭和22年5月15日発行の『学習指導要領算数科数学科編(試案)』として明らかにされたのであり,その意味において,算数科の成立は「学習指導要領」の成立と一体であると言える. この「学習指導要領」作成をめぐって日本側の担当者とCI&Eとの間でなされた会議の報告書が国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP文書(いわゆる「在米史料」)に見い出されるが,本研究では,この「在米史料」にもとづいて,算数科・数学科の学習指導要領の成立過程の全体像を,次の3つの時期に区分して明らかにした. 第1期:昭和21年6月から10月までの「前史」 第2期;昭和21年10月から12月までの「成立期」 第3期;昭和22年1月から3月までの「修正期」 また,日本側の史料にもとづいてその時代考証がなされていた昭和21年度暫定算数教科書の成立についても,「在米史料」にもとづく新たな時代考証を行なった.さらに,算数科・数学科の成立過程の当初において混在した2つの用語「コース・オブ・スタディ」(Course of Study)と「カリキュラム」(Curriculum)についても,その概念的区分けがなされていく過程を明らかにした.
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