研究分担者 |
片寄 晴彦 和歌山大学, システム工学科, 助教授 (70294303)
新山王 政和 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (10242893)
南 曜子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10135395)
小川 容子 鳥取大学, 教育地域科学部, 助教授 (20283963)
大西 友信 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10023988)
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研究概要 |
問題提起:わらべ唄などでは,歌い出しのキーや参照音が与えられているわけでも,またテンポが示されているわけでもない。しかし,それぞれがバラバラに歌いだしたにも関わらず,しだいに全体のキーに統一されてゆく.一見何でもないことのようだが考えてみると不思議な現象である。バラバラのキー,テンポであったはずの歌がいったいどのような原理,法則に基づいてキーが統一され,集団のピッチマッチが可能になるのであろう。 我々が考えだした仮説は次の8点である。 1)多数の人のキー,ビートに統一される。2)集団のリーダーの人に統一される。3)音楽的能力の高い人のキーに統一される。4)高い声の方に統一される。5)低いキーの人に統一される。6)早く歌いだした人のキーに統一される。7)声の大きい人のキーに統一される。8)平均的な高さのキーに統一される。 研究の方法:マルチトラックレコーダーMD8(Yamaha)を使用し、わらべ唄を同時録音した。これを録音編集システムProToolsによってハードディスクに収録し、Auto Tuneというピッチ解析アドインソフトでデータを分析した。テンポの統一については,イメージ情報科学研究書に動作・音響解析システム「Atom8」の開発を依頼し、これによって手拍子や足のステップと音楽ビートの同期化に関する分析データをえることができた。 実験・調査結果:意外にも1)・7)は否定され,幼稚園児、大学生ともに仮説8)の「平均的な高さのキーに統一される」という結果となった。ただし、テンポに関しては、平均的な速度ではなく、速い人に引摺られてどんどんはやくなったり、また逆に遅くなってゆくというように一定しなかった。 音楽教育への示唆:本研究では,自由斉唱としてのわらべ唄が,歌う過程で互いに譲り合いながら平均的なキーに統一点を見いだしているということを発見した。このことは,近年の幼稚園などで教えられている<わらべ唄>との決定的な違いである。わらべ唄を社会化という視点から見れば本来のわらべ唄にみられるキー決定のプロセスにこそより重要な意義が認められるべきであろう。
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