研究概要 |
本研究,ホワイトカラーの業務分析の方法論,ならびにそれをサポートするツールを構築することを目的とする.本研究では,これらの方法論とサポート・ツールを利用して,ホワイトカラー職種の中でも特に,設計や開発,生産技術,生産管理業務といった専門的技術職を対象に業務分析を実施し,業務設計・改善といった生産性向上を支援していくものである.このような研究目的に対して,平成10〜12年度の研究期間を通じた成果として得られた知見は以下に記す通りである. (1)利用知識と業務プロセスに着目したホワイトカラーの業務分析技法を構築した.この方法は,ホワイトカラー業務に必要となる知識を6つのタイプに区分した知識内容,5つの区分から簡易に把握できる知識の有効度,知識の利用に対する依存性などから,個々の担当者のもつ知識とそのプロセスを分析するものである.このような知識分析の枠組みに従って,設計,生産技術,営業,人事,生産管理など,さまざまなホワイトカラー業務で必要となる知識を明らかにした. (2)上記(1)で構築したホワイトカラー業務分析技法を生産技術業務と生産管理業務へ適用し,この分析法の有効性を検証した.特に,非鉄金属メーカの設備設計を担当する生産技術業務に関して,その業務プロセスを明らかにしに,担当者がもつ知識の有効度と,年間の業務量や設計プロジェクト取りまとめ額など,生産性指標との関連性を示すことができた. (3)上記(1)のホワイトカラー業務の分析技法をサポートするソフトウェア・ツールのプロトタイプを構築した.このツールは,汎用表計算ソフトExcelを利用して開発され,特にグラフィック表示を有したモデル構築機能を特徴としている. (4)上記(3)の業務分析支援ツールの効果を検証するために,製造設備の設計業務,ならびに生産管理を対象に業務分析を実施した.また,このツールの利用による業務分析とは別に,業務中の情報利用といった異なる観点からも,業務分析を支援する方法論を提出し,新幹線の運転手といった多くの知識を必要とする業務を対象に分析を行った. (5)ある大企業の全部門を対象に,すべてのホワイトカラー職種に対する生産性阻害の要因を,質問票を用いたアンケート調査により明らかにした.ここでは特に,ホワイトカラー業務に対する時間的な効率と業務の質に対する影響を解明し,生産性阻害要因との関係を考察している. (6)眼球運動解析を用いた業務中の情報利用を中心とする業務分析を実施した.その対象として,新幹線の運転業務,テレビ・コマーシャル作成者などに対して適用した.その結果,テレビ・コマーシャル作成者の意図に対する視聴者の見方との相違,ならびにそれらに対するコマーシャル設計パラメータの影響などを抽出できることが,この分析法には明らかになった.また,新幹線運転手の運転業務に提案方法を適用することによ,り業務分析を実施するとともに,そこで得られた業務プロセスをもとに,新ATCに対応する新しいマン-マシン・インタフェースの設計への活用法も示唆した. (7)これまでに構築したホワイトカラーの業務分析技法の分析結果をもとに,技術的専門職に対する業務分析・改善に対する指針,ガイドラインをまとめた.ここでは特に,業務設計の新たなパラダイムとして「人間中心型」アプローチを提唱し,その効果を確認するためのケーススタディも実施した.ここで提案する人間中心型アプローチとは,従業員の能力・知識の増進を適切な業務分析に基づき向上させるとともに,従業員の望む業務環境,業務内容,仕事の仕方を与えることにより,従業員のモチベーションやモラールの向上,そして仕事や組織に対する満足度や信頼感を上げることを狙うものである.
|