研究分担者 |
巌倉 正寛 工業技術院, 生命工学工業技術研究所, 室長
大前 英司 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30284152)
片柳 克夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20291479)
巖倉 正寛 工業技術院, 生命工学工業技術研究所, 室長
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配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
2000年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1999年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1998年度: 6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
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研究概要 |
大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をモデルタンパク質として,そのミクロ構造が分子全体のダイナミックス(揺らぎ)や安定性,機能発現とどのように関わっているかを明らかにすることを目指し,生物構造学的研究を行った。活性部位から遠く離れた3つのフレキシブルループ中のGly67,Gly121,Ala145を種々のアミノ酸置に置換し,その安定性,断熱圧縮率,酵素機能,X線結晶構造を野生型DHFRと比較した。その結果,わずか1アミノ酸置換により圧縮率が大きく変化し,構造の揺らぎが影響を受けること,また,変異部位から遠く離れた部位の温度因子やキャビティー分布が変化しており,変異の影響は長距離にまで及んでいることが明らかになった。圧縮率の小さい変異体ほどキャビティー量が少なく酵素活性が低下することから,構造の揺らぎが機能発現にとって重要な因子であることがわかった。高圧NMRの実験から,補酵素の結合ドメインを含むヒンジ領域とフレキシブルループ領域が圧力により敏感に影響を受け,高圧下では2つのコンフォマー間の平衡がコンパクトな構造へとシフトすることがわかった。DHFRの酵素反応中間体として存在する種々のリガンド複合体の断熱圧縮率は,基質と補酵素の結合や脱離にともなって大きく変化し,その変化量と分子内キャビティー量との間には良い相関があることを見出した。このように,圧縮率を指標とすることにより,アミノ酸置換やリガンド結合による局所構造の変化が,原子のパッキング状態の改変をとおして分子全体の揺らぎに影響を及ぼすとともに,これまで重要視されてこなかったループ領域が,揺らぎと機能の発現において重要な役割を演じていることが明らかとなった。
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