研究概要 |
本研究では,超音波で光を変調することにより生体の光イメージングの分解能を向上させる手法について検討し,以下の成果を得た. ・超音波による光の変調機序に関する検討 冷却光電子増倍管とロックインアンプを用いた微弱光検出システム,およびマッハツェンダ型干渉計を用いた光周波数のドプラシフト計測システムを作成し,超音波音場による光の屈折,散乱体粒子の振動による光の位相変調,超音波による光周波数のドプラシフトなどの光変調機序に関して検討し,媒質の散乱係数と変調光強度の関係を求めた. ・後方散乱光によるイメージングの可能性 生体を透過する光を用いてイメージングを行う方法では,送受光器を対向させる必要があるとともに,超音波で変調された光が強い減衰を受けるため,イメージング可能な組織の厚さには強い制約があり,計測対象が頬や乳房などに限定される.そこで後方散乱光の利用可能性について検討を行い,散乱体振動による光の位相変調を干渉光学系で検出する方式を用いることにより,変調成分の検出が可能であることを見いだした. ・2次元センサを用いた微弱変調光検出法の提案と有用性の確認 超音波変調光の検出感度の向上を目的として,スペックルパターンの変調を2次元センサで計測する手法について検討した.本手法の特徴は,光をパルス化することにより,通常のCCDカメラを用いた変調成分の検出を可能としていることである.実験により本手法の有用性を検討した結果,これまでの方法に比べ,散乱係数の増加に伴う変調強度の低下率がこれまでの1/10に低減されたことから,本手法の有用性は非常に高いことが示された.また,さらに超音波をパルス化することにより,空間分解能が超音波の波長と同程度まで改善されることを示した.
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