研究概要 |
本研究では,可視〜近紫外にかけてのフォトニクスマテリアルとして重要なII-VI,I-VII族ワイドバンドギャップ半導体超微粒子を対象とし,顕微分光法と,超高速時間分解分光法を駆使した分光学的手法によって,これらの物質の超微粒子に閉じ込められた励起子および高密度励起時に生じる励起子複合体(励起子分子等)の特異な性質とそのダイナミクスを明らかにすることを目的とした.本研究で用いることを計画した試料はI-VII族化合物半導体であるCuClの量子ドット,II-VI族化合物半導体であるZnSe/CdSeをベースとした量子ドット,さらに,ワイドバンドギャップ半導体という点からはやや外れるが,特徴ある試料の提供を受けたGaAs/AlGaAsの量子ドットについても研究を行った.以下に,これらの物質についての研究成果を列記する. 1.CuCl量子ドットにける励起子の非マルコフ的緩和. 2.CuCl量子ドットにおける励起子の赤外過度吸収分光. 3.CuCl量子ドットにおける励起子の二光子励起分光. 4.CuCl単一量子ドットの顕微発光分光. 5.ZnCdSe単一量子ドットの発光の時間分解分光. 6.CuCl量子ドットの共鳴発光スペクトルとその均一幅の観測. 7.GaAs単一量子ドットの顕微発光分光と多励起子状態. 以上の研究により,CuCl,ZnCdSe,GaAs等の物質系における量子ドットの各々において多くの新しい実験結果と知見が得られた.特にこれらの物質の単一量子ドット発光分光では,従来のような多数の量子ドットからの発光を観測することでは得られない重要な観測結果を得た.また,ZnCdSeやCdSe(論文未発表)量子ドットについてはその単一量子ドットからの発光の時間分解分光を行うことにも成功し,量子ドットにおける光励起キャリアおよび励起子の緩和に関する新たな知見も得られた.このように,本研究によって様々な量子ドット系に特有の興味ある現象が明らかとなった.
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