研究概要 |
(岡)GnRHニューロンの分泌活動を調べるために,微小炭素繊維電極(CFE)による電気化学的な測定法を開発した。アンペロメトリーによる記録を行った結果、自発的なスパイク状の電流が記録された。スパイク状電流の大きさがGnRH溶液のアンペロメトリーと同様の電極電位依存性を示したことから、この電流は終神経GnRH細胞の細胞体から自発的に開口分泌により放出されたGnRHの酸化電流であろうと結論した。CFE測定法の結果を実際のGnRH放出と関連づけるために脳スライスを用いてメディウム中へのGnRHの放出を飯郷の協力の下に現在測定している。 (篠原)電極表面における分子集積膜の設計により、生体有用物質を分離プロセスなしてできるだけ簡便かつ迅速に計測できる電極システムを設計、作製することを目指し、以下の2つの成果をあげた。(1)ヒトの必須アミノ酸であり神経伝達物質やホルモンの前駆体として重要なトリプトファン(Trp)の疎水性に着目し、疎水性分子で表面修飾した電極におけるその選択的酸化計測を実現した。さらにGnRHなどTrp含有ペプチドホルモンの酸化計測能と修飾分子層の構造との関係を考察した。(2)メルカプトウンデカン酸(MUA)の自己集積化草分子膜を形成させた金電極において、アスコルビン酸などの親水性電極反応物質の酸化は大きく抑制される一方、疎水性メディエーターの酸化計測は全く影響を受けないことを明らかにした。さらに自己集積化膜上に酸化還元酵素を固定化したハイブリッド電極を作製し、妨害物質の影響を受けにくいメディエーター型アンペロメトリックバイオセンサーを作製できた。 (飯郷)アユ松果体の灌流培養を行い,メラトニン分泌リズムを指標に生物時計の性質について検討した。明暗条件下で観察される暗期に高く明期に低い日周リズムは明暗条件を逆転させると新しい光周期に同調したリズムを示した。恒暗条件下で6時間の光パルスを様々な時刻に与えると,光パルスの開始時刻によりメラトニン分泌リズムは異なった位相変位を示した。すなわち,主観的暗期の前半の光パルスは位相の後退を,主観的暗期の後半の光パルスは位相の前進を引き起こしたが,主観的明期の光パルスは位相変位を起こさなかった。以上の結果から,アユ松果体に存在する生物時計の性質の一端が明らかになった。
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