研究概要 |
本研究は,長手軸方向を揃えたウィスカーで強化したマイクロ部品を光造形法で製作することを目的としている.液体の紫外線感光性樹脂とウィスカーの混合物に電界を印加し,電界方向にウィスカーの長手軸方向をそろえた後,樹脂を所望の形状に硬化させることによって,ウィスカー方位のそろったマイクロ部品を製作した.ウィスカーは直径が1ミクロン,長さが数十ミクロン程度の円柱形状をしており,微小寸法で高強度,高硬度であるため,マイクロ部品の強化材として使用するために適している.光造形法では,液体の紫外線感光性樹脂を固体へと硬化させる際に収縮し,これが製作誤差になる.硬化した樹脂の周囲の液体樹脂を溶剤で除去する際にも,溶剤が硬化した樹脂に対して,エッチングのような作用を起こすために,さらに収縮する.部品のサイズが小さくなるほど,部品の体積の割に表面積が大きくなるため,後者の影響はより,顕著になる.すなわち,マイクロ部品になるほど,収縮による誤差が大きくなる.そこで本研究では,樹脂でできたマイクロ部品をウィスカーで強化して収縮を抑制することを行った.まず,この手法でウィスカー方位をそろえることができることを計算と実験の両面から確かめた.次に,樹脂中でウィスカー方位をそろえることによって収縮を抑制できることを計算と実験の両面から検討した.樹脂のみでは7%収縮するのに対して,ウィスカーを体積含有率でわずか1%,方向をそろえて混合するだけで,ウィスカー方向については,収縮を2%に抑制することができた.次に,機械的な強度について調べるため,ウィスカーの方向を揃えて強化したマイクロ造形物の引張試験を行った.その結果,ウィスカーを揃えた方向についての引張強度が最も向上し,機械的な強度の面からも,ウィスカーの方向を揃えることの有効性を確かめることができた.
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