研究概要 |
ロボットの手首関節機構は,作業角度を自在に実現するために,立体角で2π[sr]以上の可動範囲を付与することが普通である.研究代表者らは,変形フックス継手を2つ連結し,その連鎖を3重にした等速自在継手を利用した関節機構を提案してきた.入力軸を固定節リンクAとし,B,C,D,そして出力軸を先端節Eとしたとき,リンクBにアクチュエータを付け,リンクBの揺動によって,先端部を駆動する.これまで,試作第3号機まで製作してきた.本研究では,試作第3号機の問題を踏まえ,3Dモデラと3D機構運動シミュレータを導入して,仮設計そして詳細な検討を行って,設計を進めた.その結果,中間節すなわちリンクCの中央に,両端の対偶軸を含む平面に垂直に新たな回転対偶を設け,リンクCを2つの節からなる開連鎖とすることによって,機構内内力の発生を安定的に押さえ,ひいては対偶負荷を大幅に低減できるようになった.また,機構駆動システムも,これまでは冗長軸の制御が難しかったが,リンクCに新たな対偶を付加することによって,先端の動きが3自由度となり,3つのアクチュエータが独立し,アクチュエータの制御システムが単純になった.研究成果を列記すると,(1)このリンクCへの対偶付加によって,先端負荷10kNに耐える高負荷用大型関節機構を実際に設計・製作することができた.(2)リンクCの節変更によって,関節機構の構造が大きく変わり,Culverの特許で提案されている機構と本質的に異なる新しい機構を開発できた.(3)3Dモデラ,3D機構運動シミュレータ,有限要素法構造解析を連結させた空間機構の設計システムを構築できた.(4)四重連鎖関節機構の可能性を検討し,大きな動作範囲を実現できるが強度確保が難しいことがわかった.(5)機構開発過程で,球面六節閉連鎖を用いたあたらな関節機構を発明できた.
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