研究概要 |
研究目的を達成するために具体的に取り組んだ課題の研究成果を順次述べる。 [1]実用化をめざした海洋情報伝送システムを開発するには、設計作製した装置を実験・評価し、改善する必要がある。河川や浅い海での実験は、音波が底面、側面、水面等で大きく反射、散乱し、安定性、再現性の面から問題である。そのために本校に設置されている大型無響水槽の音響特性の測定と解析を行い、更に、吸音材を追加整備し、音響特性の改善を図り、情報伝送実験のための環境を整えた。 [2]水中音響による情報伝送が可能なディジタル変調方式についてのシミュレーションを行った結果,FSK変調方式がノイズに強く,安定している事を確認した。FSK変調回路及び復調回路を設計製作し、大型無響水槽で伝送実験を行った結果、エラー無しで情報伝送できることを確認できた。インターフェースの設計製作を行い,海中での遠隔制御等にも適用できるように改良した。大型無響水槽及び実海域での水中情報伝送実験を行った結果、浅海200mで高伝送率を有するシステムが実現できた。 [3]海洋情報伝送システムを実用化する場合、静止状態での利用では用途に制限がある。そこで、移動体でも利用可能か否かを実証するため、海中ロボットが必要となり、新規に設計・製作を行った。コンパクト化のために、プロペラ1個で操縦と推進が可能な小型の可変ベクトル推進器を新たに開発した。海中ロボットの遠隔制御実験を行った結果、大型無響水槽内では100%の基本航行制御を実現した。更に、海中ロボットを自律化するために、センサシステム、制御プログラムを組み込んだ分散コントローラを構築し、大型無響水槽やプールで実験を行った。方位、潜航深度を一定に保持しながら、障害物を回避して自律的に航行することのできる海中ロボットが実現できた。 [4]海中ロボットを実海域で運用する場合には、ロボットの位置や方位を支援母船から把握できることが必要がある。SSBL方式の3次元測位システムの設計製作を行った。大型無響水槽での評価実験では、10cmオーダの精度を有するシステムを実現した。 [5]海中ロボットに搭載したCCDカメラから取込んだ画像を処理し,種類を識別するシステムを試作した。鰯,鯵,鯖について実験した結果,識別率は90%以上を達成できた。 以上のように、本研究の所期の目的は十分達成された。今後は、実海域での全システムを統合した総合評価実験を行い、できるだけ早急に実用化を図りたい。
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