研究概要 |
Mn_<1-X>Zn_XFe_2O_4という遷移金属からなる,酸化物薄膜(フェリ磁性半導体薄膜)を作製し,その電気的特性を利用した高耐久性の飲料識別システムを開発した.本研究で明らかになったことを以下に示す. ・スパッタリング法を用いたフェリ磁性半導体薄膜の作製法を検討した.スパッタリング条件やアニーリング条件の最適化を行い,高品位の薄膜を作製した. ・真空蒸着法を用いたフェリ磁性半導体薄膜の作製法を考案した.蒸着時の条件やアニーリング条件の最適化を行い,金属多層膜から酸化物へ転換するという,スパッタ法に比べてローコストで薄膜を作製する技術を考案した. ・フェリ磁性半導体薄膜を用いた飲料識別システムを開発した.センサ部であるフェリ磁性半導体薄膜の応答は表面と試料溶液との電気的な接触であり,表面電位は電気2重層より発生するため,物理的刺激が加わっても比較的短時間で平衡状態に戻りヒステリシスの原因とならないが,膜内電位は膜内におけるイオン等の拡散速度がきわめて遅いため,安定までに長時間を要する.したがって,試料溶液へのセンサ部の投入は短時間であることが望ましい.試作した飲料識別システムは,センサ部が一定時間のみ試料に浸るようにするセンサ部昇降装置と,クリーニング処理を施すための試料ターンテーブルを備える. ・試作した飲料識別システムで,実際に複数の飲料(ワイン,ミネラルウォータ,茶類等)を評価したところ各試料を安定に識別できた.また,県内の名水に指定されている主なわき水と,市販のミネラルウォータの識別試験を行ったところ,人間の感覚では識別が比較的困難と思われるこれら全ての試料を明確に識別できることを確認した. ・様々な試料に対する識別試験を約10ヶ月間行ったが,センサ部に使用したフェリ磁性半導体薄膜は,膜の剥離や劣化等が確認されず,安定な出力特性を示すことを確認した.
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